「大学院に行きたいけれど、学費は奨学金がないと通えなさそう…」
「社会人になってから、奨学金の返済に苦しみたくない…」
などと悩まれる方は多いと思います。
この記事では、令和3年度の日本学生支援機構の大学院第1種奨学金の全額返還免除を受けた筆者が、
返還免除を受けるために行ったことや、書類の書き方についてまとめました。
この記事でわかること
- 日本学生支援機構 第1種奨学金の返還免除を受けるコツ
- 返還免除申し込み書類の記入のコツ
本記事において書かれた内容は、一般論と筆者の経験に基づいて書かれたものです。
あくまで参考としてご覧ください。
また、学校や研究科ごとに申し込みの形式や時期が異なることに注意してください。
日本学生支援機構 奨学金返還免除制度とは
日本学生支援機構のHPには、以下のような説明があります。
大学院で第一種奨学金の貸与を受けた学生であって、貸与期間中に特に優れた業績を挙げた者として日本学生支援機構が認定した人を対象に、その奨学金の全額または半額を返還免除する制度です。
日本学生支援機構 特に優れた業績による返還免除の手続き
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/saiyochu/gyosekimenjo/index.html
従って、大学院入学時に日本学生支援機構の第一種奨学金に申し込んだうえで、在学中に研究などで一定の業績を上げることが出来れば、返還免除を受けられる可能性があるということです。
また、忘れずに返還免除の申し込みを行う必要があります。申し込み形式や時期は大学ごとに異なったりするので、各人がよく気を付けておく必要があります。
日本学生支援機構の第一種奨学金とは
日本学生支援機構が大学院生向けに用意する奨学金のうち、無利子で返還ができるものです。
申し込み資格として、「経済的理由により修学に困難で優れた学生等であると認められる人」とありますが、
留年や休学をしていなければ、ほとんどの大学院生が申し込むことが出来ると思われます。
貸与金額は以下とおりです。
区分 | 貸与月額 |
---|---|
修士課程相当(※1) | 50,000、88,000 |
博士課程相当(※2) | 80,000、122,000 |
※2博士・博士後期課程または博士医・歯・薬・獣医学課程(6年制学部卒)、一貫制博士課程後期相当分
(参考:日本学生支援機構 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/taiyo/taiyo_1shu/kingaku/2018ikou.html)
修士2年間、満額の88000円を貸与したとすると、
88000×24か月=211万2000円
博士3年間、満額の122000円を貸与したとすると、
122000×36か月=439万2000円
となるので、全額免除であれば、かなりの金額を受け取れることになります。
半額免除でも、修士で105万6000円、博士で219万6000円です。
国公立大学であれば、学費を支払えてしまう金額です。
このように、比較的申し込み資格のハードルが低めで、かなりの金額を受けられる、ねらい目の奨学金であることが分かると思います。
しかし、機構に返還免除を認めてもらえるような業績を残すのは難しいと考えられる方も多いかもしれません。
実際のところ、案外そうでもないです。
きちんと大学院時代に研究を行い、まじめに単位を取っていれば可能性があります。
詳しくは次の項で説明します。
業績の評価方法とその対策
評価基準
返還免除を受けるためには、以下の項目について、何らかの取り組みを在学中に行う必要があります。
項番 | 業績の種類 | 機構が定める評価基準 |
---|---|---|
1 | 学位論文その他の研究論文 | 学位論文の教授会での高い評価,関連した研究内容の学会での発表,学術雑誌への掲載又は表彰等,当該論文の内容が特に優れていると認められること |
2 | 大学院設置基準第16条に定める特定の課題についての研究の成果 | 特定の課題についての研究の成果の審査及び試験の結果が教授会等で特に優れていると認められること |
3 | 大学院設置基準第16条の2に定める試験及び審査の結果 | 専攻分野に関する高度の専門的知識及び能力並びに当該専攻分野に関連する分野の基礎的素養であって当該前期の課程において修得し,若しくは涵養すべきものについての試験の結果が教授会等で特に優れていると認められること,又は,博士論文に係る研究を主体的に遂行するために必要な能力であって当該前期の課程において修得すべきものについての審査の結果が教授会等で特に優れていると認められること |
4 | 著書,データベースその他の著作物(第1号及び第2号に掲げるものを除く。) | 専攻分野に関連した著書,データベースその他の著作物等(第1号及び第2号に掲げる論文等を除く。)が,社会的に高い評価を受けるなど,特に優れた活動実績として評価されること |
5 | 発明 | 特許・実用新案等が優れた発明・発見として高い評価を得ていると認められること |
6 | 授業科目の成績 | 講義・演習等の成果として,優れた専門的知識や研究能力を修得したと教授会等で高く評価され,特に優秀な成績を挙げたと認められること |
7 | 研究又は教育に係る補助業務の実績 | リサーチアシスタント,ティーチングアシスタント等による補助業務により,学内外での教育研究活動に大きく貢献し,かつ特に優れた業績を挙げたと認められること |
8 | 音楽,演劇,美術その他芸術の発表会における成績 | 教育研究活動の成果として,専攻分野に関連した国内外における発表会等で高い評価を受ける等,特に優れた業績を挙げたと認められること |
9 | スポーツの競技会における成績 | 教育研究活動の成果として,専攻分野に関連した国内外における主要な競技会等で優れた結果を収める等,特に優れた業績を挙げたと認められること |
10 | ボランティア活動その他の社会貢献活動の実績 | 教育研究活動の成果として,専攻分野に関連したボランティア活動等が社会的に高い評価を受ける等,公益の増進に寄与した研究業績であると評価されること |
11 | その他機構が定める業績 | 返還免除内定者は、本機構が定める貸与奨学金の停止又は廃止の事由(貸与奨学規程第19条第2項又は第21条第1項)に該当することなく修業年限内で課程を修了すること。ただし,修業年限の終期より前に貸与期間が終了となる場合は,修了する見込みであること |
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/saiyochu/gyosekimenjo/hyoka.html
一般的な大学院生が狙いやすい項目について、マーカーをつけています。
返還免除を受けるためには、特にこのマーカーを付けた部分の業績にカウントされるような活動を意識的に行ってみると良いでしょう。
また、返還免除の審査は各大学院の研究科ごとに行われるため、自分の所属している研究科で上位に滑り込むことが出来れば十分です。
従って、同級生よりも少し頑張って、まじめに研究して、ある程度まとまった論文を学会に出して、きちんと授業に出席して…と、大学院生としての生活をまじめに積み上げていけば割と簡単に達成できたりします。
(参考)筆者の場合
筆者も、ごくごく一般的な大学院生だったので、発明などの大きな業績はありませんでした。
それでも全額免除を受けられたのは、上表でマーカーのついている部分の業績を多く積み上げたからだと考えています。
筆者は修士課程において、奨学金を受け、全額免除となりました。
修士時代に行った業績は以下の通りです。
項番 | 業績の種類 | 筆者が行ったこと |
---|---|---|
1 | 学位論文その他の研究論文 | ・学位論文の提出 ・査読つき論文の投稿(1回) ・査読付き国際学会での発表(2回) ・査読なし国内学会での発表(5回) ・査読なし国内学会での連名発表(2回) |
6 | 授業科目の成績 | ・GPA換算で3.7 |
7 | 研究又は教育に係る補助業務の実績 | ・修士1年次後期にTAを務めた |
ほとんど、1の学位論文その他の研究論文にカテゴライズされています。
恐らく、ほかの学生と差別化できた部分は、「査読付き論文の投稿」と「査読付き国際学会での発表」ではないかと考えています。
私の所属していた大学院では、毎年、建築学会と空気調和・衛生工学会(どちらも査読なしの国内学会)へ論文を投稿する学生が多かったので、「査読なし国内学会での発表」だけでは全額免除は厳しかったと思います。
私のように、論文での業績を主に返還免除を狙うのであれば、評価されやすい種類の論文を積極的に投稿してみるとよいでしょう。
どのような種類の論文が評価されやすいかは、大学院によって異なってくるようです。
早い段階で大学院の担当者に問い合わせて、どの論文に投稿するのかを考えておくべきでしょう。
書類の作成方法
各大学院の決まりに沿って確実に作成すること
返還免除を受けるうえで、各大学院のルールに従ってきちんと書類を作成することが、業績の次に重要なことになります。
大体の大学院では、時期になると以下のようなフォーマットが配布されて、期限までに記入するように指示を受けると思います。
これを記入するときに気を付けるべきなのは主に以下3つ。
- フォーマット記入のルールを守ること
- 業績の欄に書く論文や共著者などの名称は、面倒くさがらず正式名称で記入すること
- 評価項目にカテゴライズされるような業績はどんなに小さなことでも記入すること
- フォーマット記入のルールを守ること
下の例における、四角く囲った部分のことですね。
この場合、業績を証明する書類の番号を記入すべきことに気を付けなければなりません。
このような細かなルールが守れていないことによって、不受理となり期限内に提出できなかったなどという、
もったいないことがないようにしたいですね。
- 業績の欄に書く論文や共著者などの名称は、面倒くさがらず正式名称で記入すること
論文のタイトルが長かったり、共著者が多かったり、ついつい省略したくなる気持ちは分かります。
ですが、ここでは安全をみて、証明する書類に書かれている正式名称で記入しましょう。
証明する書類と整合性が取れていないと判断されたりといったことがないようにしましょう。
- 評価項目にカテゴライズされるような業績はどんなに小さなことでも記入すること
記入の際に一番大切なことです。
自分の中では、「大した業績ではないよね~」と思っていることでも、
日本学生支援機構が示す項目に当てはまるのであれば、出来るだけ記入しましょう。
思いがけないところで評価されたり、ほかの学生と差別化出来たりといったことがあるかもしれません。
返還免除の申し込みにおいて、
業績の証明となる書類の発行や、指導教員からの推薦状が必要となる場合があります。
申し込みの際は十分に余裕をもって作業を行いましょう。
フォーマットがなければ、
ネットに公開されているフォーマットを参考に美しいものを作成する!
大学院によっては、提出すべき申請書のフォーマットが決められていない場合もあるかと思います。
その場合は、とにかく見やすく美しい書類を作成することをこころがけてください。
書類が見やすいだけでも、評価する側からの印象が良くなるかもしれません。
まとめ
本記事では、日本学生支援機構の奨学金返還免除についてまとめました。
この記事のまとめ
- 日本学生支援機構の第一種奨学金では、無利子で数百万の貸与がされる
- 返還免除の評価は各大学院の研究科ごとなので、そこまで高いハードルではない
- 評価項目にあたる業績をこつこつ積み上げることが大切
- 申請書の提出方法や必要書類に注意すること
返還免除を目指す大学院生の方々(特に建築学専攻の方!)にとって、少しでも参考になれば幸いです。
返還免除を目指すことは、決して難しいことではありません。
この記事を読んで、少しでも多くの方が努力されて返還免除を受けられたのであれば嬉しいです。
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